末續さんの講演会を見学
先日、日々指導していただいている末續さんの講演会の仕事を初めて見学しました。医療機器を扱う、エドワーズライフサイエンスという外資企業の社員が集まって、上半期の事業報告から今後の展望などを話し合う会議の中で、社員の士気向上のために末續さんはゲストスピーカーとして招かれました。
「世界で最も過酷な競争の果てに辿り着いたもの」と題され、
内容は「努力とは?」「チームワークとは?」「あきらめないとは?」「信頼関係とは?」「未来とは?」というテーマで講話されました。
メダリストという陸上界で偉業を達し、さらに今もなお走っている「現役選手としての末續さん」と、私たちの選手の「コーチとしての末續さん」の姿しか見たことがなかったので、初めて競技場以外で仕事をされている姿を目の当たりにしました。
講演会とは講演者の答えを聞くだけの場だと私は思っていたのですが、末續さんの講演会は自分自身にも置き換えて考えさせられる内容だと感じました。例えば、努力とは?というテーマでは、他人が見てこの人は努力している。と思うような「努力していると思われる行為」は努力とは言わず、「自分で気付いて見つけ出すもの。」とおっしゃっていました。
言い換えると、答えはあなたの中にありますよ。ということなんだと私は理解しました。
話を聞きながら、私も学生の頃はたくさん練習量をこなして「頑張っている人に見られたかったなぁ」とか、「アドバイスしてもらったことを全力で意識している風に見せることが努力だと思ってしまっていたなぁ」と、自分自身の事を思い返しながら聞いていました。
ある日、末續さんが「自分の棒高跳のスタイルを見つけ出せ」と私に言ってくれた日から、「私のこれまでの努力の概念が変わったんだな」と思いました。表現する競技から、高く跳ぶために考える競技へと変えて、日々考えながら見つけ出していったものは、後に「自信」に繋がっていきました。そうやって色々な角度から末續さんの経験で得た知識を、ある時には“言葉”で、ある時には“背中”で見せてくれていたんだなと改めて思いました。
レベルは違いますが、今回この講演の内容を同じアスリートとしての立場で聞き入りましたが、この会場に集まった企業の人たちは、どのように捉えたのだろう?とふと思ったので、会場の反応を見たり、感想を聞いていると、講演を聞きながら大きく頷いていたり、「感動しました!!」と話している人を多く見かけました。末續さんの言葉をどう受け取って、どうご自身の仕事のモチベーションに繋げていくのかがとても気になりました。
“心技一体”という言葉がありますが、私はアスリートとして生きていて本当にこの言葉通りだと思っています。身体が元気でも、心がついてこなくてトレーニングに打ち込めない日々が長く続いた経験があります。その経験から身体を鍛えるよりも先にまずは心が健全であるかが大切だと思っています。ただトレーニングをやるだけでは強くはなりません。パフォーマンスを高めるためには質を維持したトレーニングを継続する必要があります。そして、そのための目標と気合いが必要でした。今回、社員の方の士気向上のための講演会ということで、モチベーションを高く保つことは目標達成への近道というのはどんな分野にも共通することであり、事業や営業や開発など、様々な仕事をしている方々にとっても同じなんだという事を知りました。
責任を持って仕事をしている社員300人を対象に、経験を語る末續さんの姿は、とてもかっこよく映りました。講演という仕事は、私からすると大勢の前で経験を話すというだけで、とてもストレスを感じてしまいます。末續さんは講演の内容はあえて考えを決め込む事はせず、聴衆を目の前にした時に、ライブで出てくる経験を元に話しているとおっしゃっていたので更にびっくりしました。同じ経験をしたとしても一つの事について深く掘り下げ、それを更に言葉にして語れる人いうのは、そうたくさんはいないように思います。末續さん自身がいつも常に頭を働かせて考えている方だからこそできる仕事だと今回初めて講演会を聞いて、ありきたりな言葉ですが、「流石すごいなぁ」と思いました。今回、他企業の研修会に参加したことで、アスリートとしてさまざまな場面で仕事をする末續さんの新しい側面を見せてもらうとともに、社会見学をしたような気分で、とても刺激的な一日でした。